– ビジネスパーソンのための実践ガイド
「本音」の正体とその誤解
ビジネスの世界では「インサイト」とも呼ばれる「本音」ですが、多くの人は自分の本当の気持ちを見誤っています。私たちが「これが私の本音だ」と思っていることの多くは、実は社会や周囲から受け入れた考え方にすぎません。特に会社での役割(管理職や部下など)や家庭での立場(親や配偶者など)に合わせて行動していることは、本当の自分の望みとは違うことが多いのです。35〜45歳頃に多くの人が経験する「中年の危機」は、周りの期待に応えるために生きてきたことへの疑問から生まれます。
成果主義の落とし穴
現代のビジネス環境では、成果を上げることが重視されるあまり、多くの人が「成果のために行動する」ことを当然と考え、それを自分の本音だと勘違いしています。しかし、本当の本音は違います。たとえば、優れた営業担当者は「売上のため」だけでなく「お客様との対話そのもの」に喜びを感じていたり、良い上司は「部下の成績を上げる」ためでなく「人を育てること自体」に満足を感じていたりします。本当の本音は、結果よりも行動そのものに喜びを見出すところにあります。
挫折が気づきをもたらす理由
興味深いことに、挫折を経験した人の方が自分の本音に気づきやすい傾向があります。なぜなら、失敗してもやめられない行動には、表面的な理由を超えた本当の動機があるからです。例えば、何度失敗しても新しいビジネスに挑戦し続ける人は、成功以上に「挑戦すること自体」に価値を見出しています。本音から出た行動は、困難があっても続けられる強さを持っています。
他者の本音と向き合う際の注意点
ビジネスの場で同僚や部下の本音を扱う際には細心の注意が必要です。多くの場合、本人自身が自分の本当の気持ちに気づいていないため、あなたが指摘しても理解されないことがあります。また、タイミングや信頼関係が築けていない状態で本音を指摘すると、相手に拒絶されるリスクがあります。人の本音を引き出すには、まず安心できる関係性を築き、相手が自分で気づけるような問いかけをすることが大切です。
実践のヒント
ビジネスシーンで本音を活かすには、次のポイントを意識しましょう:
- 自分の行動の中で、結果に関係なく「やること自体が楽しい」と感じることに注目する
- 困難な状況でも続けられる活動は、あなたの本音に近い可能性が高い
- チームメンバーの行動パターンから、彼らの本当の興味や情熱を観察する
- 相手の本音に触れる際は、信頼関係とタイミングを重視する
- プレッシャーや期待から離れて、「なぜこれをしているのか」を時々自問する
まとめ
ビジネスの成功に本音の理解は欠かせません。自分や周囲の人の本当の動機を理解することで、より持続可能なモチベーションを引き出し、長期的な成果につなげることができます。本音とは単なる「言いたいけど言えないこと」ではなく、私たちの行動の根底にある本当の原動力です。そして、それを見極め、尊重することが、個人としての充実感と組織としての成功の両方をもたらす鍵となります。